FEM(Finite Element Method)という数値解析ツールがあります。FEMとは、モデル解析手法の代表的方法のひとつで、モデルとなる物体を細かく要素分割し、それぞれの要素の挙動を計算することで、複雑な挙動を計算する手法のことをいいます。この事例では、盛土時の地盤の変状と、圧密現象(地盤中の水の排水)をFEM解析(土・水連成FEM解析)で計算しました。
計算の設定は、以下の手順で行います。
(1)FEM解析では、まず地層の形状をモデル化します。
(2)次に、地層の形状を細かい要素に分割します。要素形状は、四角形か三角形です。
(3)地層の材料特性を設定します。材料特性は、地盤調査や土質試験(圧密試験、一軸圧縮試験、標準貫入試験など)から決定します。
(4)材料定数を各要素に設定します。
(5)いつ、どの要素を盛土するか、いつ家を建てる(=家荷重をモデルに与える)か設定します。
(6)その他の条件、地下水条件や変形条件を設定します。
計算した結果、新設の盛土を中心に、粘性土層が圧密沈下していたことが分かりました。そして、隣接する家が引きずり込まれるようにtanθ=14/1000まで傾斜しました。その結果、家の損傷や、コンクリートブロックのひび割れにつながったことが分かりました。
木造住宅の傾斜による影響(*1)は、傾斜がtanθ=3〜5/1000を超えると不具合が目立ちはじめ、tanθ=8〜12/1000の勾配で損傷が著しくなることが示されています。
この事例では、障害が地盤調査と数値解析で分析することで、正確に分析できたのです。 |